俺はもうすぐ死んでしまう。
その事実を知ったとき、自分が死ぬなんて実感はほとんどなかったが、仲間の死を体験していくうちに嫌でも実感するようになってきた。
「俺、もうすぐ死んじまうんだなぁ…」
自分で言うのもなんだが、俺はまだ若い。
まだまだこの世に未練はある。
その中でも特に心残りなのが、童貞のままこの世を去ることになるかも知れないと言う事だ。
くだらない、と笑う人間も居るだろうが、童貞の男ならこの気持ち解るはずだ。
特にその気持ちが強くなったのは、田中さんと出会ってからだ。
正直、同世代にはそんなに性的な魅力を感じない。
なんと言うか、やはり俺はマザコンなんだろうな。
田中さんとはじめて会ったとき、強く惹かれた。
それは性欲ってよりも、母親に対する親愛みたいなものだった。
だけど、田中さんの事を知るにつれて、次第に母親としてよりも女性として見るようになっていった。
俺なりにいろいろアプローチをかけてみたが、田中さんは優しく微笑むだで、俺を異性としてみてくれない。
多分、ただの子供としか思ってないんだろうな。
でも、俺はこのままじゃ終われない。
もう遠まわしなアプローチはやめて、勇気を出して頼んでみようと思う。
童貞捨てさせてくださいと…
「コエムシ、田中さんに会いたいんだが」
そう言うと、待ってましたと言わんばかりにコエムシが現れる。
「おめーついに決心したみてーだな」
コエムシはニヤニヤしながら俺を眺めている。
「…いいから送ってくれ」
「へいへい、せいぜい頑張れや」
気がついたら、すぐ目の前に田中さんが座っていた。
田中さんは死んだように机にもたれかかったまま眠っている。 薄暗い部屋には田中さんと…俺以外誰もいない。
(疲れてるのかな…?)
そりゃそうだ。田中さん達のおかけで、どれだけ俺達は助かってるかわかったもんじゃない。
特に田中さんは俺達の相談役だ。
死に行く子供達の相手をするのは、精神的にもかなりの負担になるんだろう。
(このままそっとしておこうかな…)
一瞬思ったが、田中さんの寝顔を見ていると、ついムラムラしてきちまった。
(さすがに寝込みを襲うのはマズいだろ…)
それに、寝込みを襲うとは言え、相手は軍人。
強姦なんてすれば、返り討ちに会うのは避けられないだろう。
でも、このまま引き下がるのも心残りだ…。
(キスだけなら…わからないよな?)
深呼吸をした後、そっと顔を近づける。
田中さんの寝息が耳元で聴こえる距離まで近づけた時、もう心臓が破裂しそうだった。
俺はこんなに純情だったか?
田中さんの薄い唇を、吸い寄せられるようにしばらく眺めた後、俺はついに決心して唇を重ねようとした。
「ん…」
いっ!?起きたか!?
ビビって後ろに飛び退いたら、ちょうど机の上に積み重ねてあった資料やらが、デカい音を立てて崩れ落ちた。
(し、しまったぁーッ!?)
その音に驚いたのか、田中さんも飛び起きる。
「!??…カンジ君!?」
「あ…えーっと…」
ヤバい。なんて説明しよう?
「あ〜そのぉ〜えっと…」
「ごめんなさい。少し疲れてたから…眠っていたみたいね。」
そう言うと、田中さんは起き上がって崩れ落ちた資料を片付け始めた。
「あっ!すいません!俺がちゃんと片付けますから!田中さんは寝ててください!」
「いいのよ。それに、私に用があって来たんでしょう?」
「え…?は、はい」
突然のアクシデントにすっかり本来の目的を忘れていたが、思い出したと同時に赤面してしまう。
「顔、赤いわよ」
「いい、いえっ、なんでもないです!すいません!気にしないで下さい!」
俺はしばらく田中さんと目を合わせないように資料を拾い集めた。
しばらくして、ようやく片付けが終わった。
思ったより量が多くて、軽い運動になった。
「ふぅ…で、こんな遅くに何の用だったの?」
「え?それは…その…」
SEXさせてください!
なんて、この状況で言えるわけない。
俺がしばらくうつむいて黙っていると、田中さんは黙って俺をしばらく見つめていた。
そして、しばしの沈黙のあと田中さんは困った顔をして口を開いた。
「まぁ、大体予想はつくけど」
ギクッ。
「…確かにあなたの年頃なら恥ずかしいことじゃないわ。それに…カンジ君はいつ死んでしまうかわからない…。男の子だもの、焦っちゃうわよね。でもね…私には夫も子供も居るの。だから…そのお願いはきけないの」
…この展開は予想していたけど、実際なってみると…ツライ。
「それに…こんなおばさんより若い子の方が良いと思うけど」
!!
「そ…そんな事絶対にないです!田中さんは僕が見てきたどんな女性より魅力的です!だって…田中さんと出会わなかったら…俺だって…こんな気持ち…」
なぜかわからないが、情けなくて俺は泣いた。
カッコ悪い…この場から全速力で逃げ出したかった。
田中さんはそんな俺を見て、少し考えているようだった。
しばらく沈黙が続く。
この沈黙は時間的には短いものだったが、俺にとっては何年も続いてるように感じるぐらい、長かった。
「んー…困ったわね…そうね…SEXはできないけれど、他の事なら…」
え?マジで?
「ほ、他のことですか?」
「それくらい、私も頑張らないとね」
そう言ってくれた田中さんの恥ずかしそうな、なんとも言えない優しい微笑みは、多分死ぬまでの思い出になるだろうな。
…それから、一息ついた後、田中さんは上着のボタンを外し始めた。
「えっ…!?ちょっ…」
まだ心の準備が出来てないんですけど!
「どうしたの?…やっぱりやめる?」
「えっ、えーと…そうじゃなくて…せ、SEXはしないんですよね?」
「…SEXだけが気持ち良い事じゃないって、あなたの年頃なら知ってるんじゃないのかしら?」
田中さんは鼻で笑いつつ、ボタンを手際良く外していく。
上着を脱いで、露わになった中さんの上半身は、軍人、しかも子持ちとは思えないほどに細くて美しかった。
女性の、しかも憧れの田中さんの身体をこんなに近くで見ることができるなんて…。
もうすっかりギンギンになった俺のそこを見て、田中さんはクスッと笑った。
「恥ずかしいから…そんなに見ないで」
「す、すみません」
慌てて目をそらすけど、やはり何度もチラ見してしまう。
そんな俺を見て、田中さんは笑いを堪えきれない様子だった。
「そ、そんなに笑わなくても…」
俺は恥ずかしさでぶっ倒れそうだった。
俺はそんな恥ずかしさをこらえて、覚悟を決めて真剣な表情を作る。
「た、田中さん…そろそろ…いいですか?」
田中さんも俺に応えるように真顔になる。
「ええ…じゃあはじめましょうか」
田中さんは、そう言って俺のズボンのチャックに手をかけた。
「あぅっ…」
つい声がもれてしまう。
田中さんはゆっくりと俺のアレを取り出すと、田中さんは優しく先っぽを舐め上げる。
…良いところだが、ここでアクシデントが発生する。
「あぅっ!」
いきなりの快感に我慢できず、どぴゅっと勢いよく俺の精子が田中さんの顔面に飛び散る。
「す…すみませぇ〜ん」
初めてとは言え、自分のあまりの早濡っぷりが情けない。
「気にしなくていいのよ。初めてならこんなものよ」
顔中精液まみれにしちゃったのに優しい田中さんマジ聖母。
田中さんは付着した精液を軽く拭き取ると、出したばっかりなのにギンギンの俺のに再び手をかける。
「あんなに出したのに…やっぱり若いわね」
「こ、今度は頑張りますっ」
そ言った俺に、田中さんは一瞬優しく微笑んだ後、今度は一気に俺のをくわえ込んだ。
「アッー!」
いやらしい音が暗い室内に響き渡る。
この人は本当に田中さんなのか?と言うくらい激しい。
あまりの快感に腰が浮き、もう2発目も発射してしまったほどだ。
すぐに俺の頭は真っ白になってきたが、ここで落ちるわけにはいかない。
「あっ、あっの…た…田中さん…」
田中さんは一旦動きを止め、俺のを口内からヌポっと解放する。
俺の精液と田中さんの唾液が混じった液体が、ネバっと糸を引きながら口元を垂れるのが最高にエロかった。
「はぁ…はぁ…どうしたの?」
田中さんも興奮してるのか、息が荒く、顔が紅い。
「あ、あの…腰…振っても良いですか…」
「ふっ…はぁ…いいわ…んぐっ!」
俺はその一言を聞くと、我慢できずに一気に突っ込んでしまった。
田中さんの口内は温かく、俺の精液と唾液が絡み合い、半端なく気持ち良い。
「むっ…んっんっ…んっ!」
俺は田中さんのうなじを眺めつつ、腰を振りまくった。
「んぐっ!…んっんっ!んん〜っ!」
喉近くまで届いてるのか、田中さんは苦しそうな顔をしていたが、あまりの快楽に俺は止めることができなかった。
「はぁっ!はぁっ!すみいません田中さん!出します!」
ドクドクッと勢い良く田中さんの口内に俺の精子が注ぎ込まれて行く。
「はぁ…はぁ…た、田中さん?」
田中さんは、優しく俺の精液を飲み干してくれた。
なんだかわからないが、嬉しかったのは確かだ。
しばらくして、俺は田中さんの柔らかい胸の中に抱かれていた。
もうそろそろ朝なのか、まどろみが気持ち良い。
「…満足できた?」
「は、はい…すいません、俺…なんか調子乗っちゃって…」
「いいのよ…これぐらい」
田中さんは俺を優しく包んでくれる。
「…あ、あの…やっぱり、俺がもうすぐ死んじゃうから…だからしてくれたんですか?」
俺の質問に、田中さんはまた困った顔をして、しばらく考えていた。
「そうかもしれないわね」
この一言は少しショックだったけど、少なくとも、この世に未練はなくなったかもしれない。
俺にとって、それぐらい幸せな出来事だった。
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