ぼくらの

317 : カコ×チズ『ぼくらの「望み」◆Jo361xbYHc』

投稿日:2007/07/18(水) 00:46:39 ID:kaHxf0iQ

死にたくないと、カコ君は嘆いた。
――…私はそれを、とても哀れだと思った。


「カコ君、私ね。契約してよかったと思ってるの」

「…っ!なんでだよ、チズ…なんで…!」


私から逃げるようにカコ君の体が、少しだけ後退した。顔の痣、選ばれた証――…死の刻印。
それが酷く滑稽に見えて、もしかしたら私は笑ってしまっていたのかも知れない。


「だって私たち、ココペリに会わなくても、ジアースが現れなくても
…戦わなくてよかったとしても、地球が滅びないとしても」


「どうせ、死ぬんだよ。」


何かにすがるように私を見ていたカコ君の表情が、たちまち歪んでいった。
頭を目茶苦茶に掻き回して、激しく首を振る。

私はそれに、追い撃ちをかける。


「コダマ君、見たでしょう。綺麗な顔してたよね?あんなあっさり死ねたら、素敵だと思わない?
契約していなかったら、私たちはジアースに潰されて死んでいたかもしれないんだよ?
…ジアースが現れなくたって。いつどんな風に死ぬのか、解らないんだよ?」

「……い、…だ」

ぜぇぜぇと肩で息をしながら、カコ君はぶつぶつとなにかを呟き始めた。
後ろ姿さえも具合悪そうに見えたのだから、顔面は蒼白に違いない。


「いやだ、いやだ……死にたくない、死にたくねえよ……!だって、だって……!」

「皆だって死にたくないよ。でも…あんなに綺麗に死ねるなら、私は素敵だと思うの。」

それでもカコ君は生きたいと首を振った。私はそれが、とても哀れにみえて


「うん、解ったよ…カコ君。」

「……あ、」


私はカコ君の傍へ近づいて、そっと肩を抱いた。びくっと肩が揺れて、小さな声が上がる。
カコ君の体は硬直していて、指の隙間から見えた顔はほんのりと赤くなっていた。


「…ち、チズ?…な、な、なんだよ…なにしてんだよ…」

「うん…死にたくないよね。死にたく、ないんだよね…」


カコ君の前へ回り込むと、顔を覆う手を優しくどけて顔を覗き込む。
やっぱり赤くなっていて、それでもその瞳はなにかを期待していた。


「大丈夫よ、カコ君。私がそんな恐い気持ち、消してあげる。」


忘れさせてあげる。

「……チズ?」


今日のチズは、何処かおかしかった。妙に優しいのは、妙に笑顔なのは、俺が死ぬからなのか?そんなに俺のことが嫌いなのかよ
命を賭けたゲームに参加しなきゃならなくなった、そんなくだらない理由で死ななきゃならない俺もおかしかった。
地球を守って、死ぬ。そんなことをしなきゃならないこの世界が、一番おかしかった。


兎に角、なにもかもおかしかった。


チズの顔が近い。
顔が熱い、赤くなってるんだろう。何がおこるのか、期待した。
まだ俺にはチズのことで舞い上がれる余裕があるんだなと、思った。


チズの手が俺の肩に触れて、チズの唇が俺の……


唇が?


イルカの鳴く声が、聞こえた気がした。


「ち、チズ?い、今、…今!!」

「うん。キス、したんだよ?」


好きな子との、キス。チズとのキス、チズと、キス!!
とうとう本格的に舞い上がった俺は、もう死んでもいいとさえ思った。
いや、まだ死にたくないけど。なんだったか、比喩表現?
――…けどすぐに、それは俺のことが好きだからとか、そんなものじゃないと気付いた。


「…俺が、死ぬからなのか?」

「え……?」


俺が死ぬから、情けをかけて
俺が死ぬから、哀れんで
俺が、死ぬから


死ぬ、から


俺はまだ、死にたくない
死にたくないけど、どうしようも、ない
そう、どうしようもない。どうしようもない、なら


「俺、どうせ死ぬん…だよな?」

「―――…うん。」


少しだけ間を置いて、チズが頷く。
眼前にあるその顔は、明らかに哀れみの瞳を俺に向けていた。


なにかが吹っ切れて、俺は目の前にいるチズを――…押し倒した。


一瞬、チズが微笑んだように見えたのは俺の気が狂ったからなんだろうか?


「きゃっ」


カコ君は本当に単純だと思う。馬鹿な子ほど可愛いを体言した、単純馬鹿の代表。
動揺したところを哀れみの目でみたら、予想通りに押し倒された。
抵抗は、しない――死ぬ前だもの、一発くらいやらせてあげてもいいと思う。
――けれど、なんなんだろう。じわりと滲む、罪悪感。


「…カコ君」


その顔を見上げると、荒い呼吸で服を開けさせるのもそこそこに性急に下半身へ手を伸ばされた。
その様は全く童貞そのもので、我慢に耐え切れずにうっかり笑ってしまう。


「――……っ!くそ、くそっ…馬鹿にしやがって」


それすら憫笑に見えたのかカコ君の動きは荒さを増し、逆に服を脱がせる作業を煩わしくした。
――女の服なんて、脱がせたことすらないんだろう。
その動きはもたついてじれったく、痺れを切らした私は自ら上着を脱ぎ、
それからカコ君の手を胸へ誘導してあげた。


カコ君は積極的な私に少し戸惑ったようだったけど、死ぬ間際の性欲に取り付かれた思考で
私の思惑を見破ることは不可能に近く、躊躇いを直ぐさま捨てては私の胸を潰さんばかりの勢いで揉みしだき始めた。


「……」


カコ君は息を荒げるばかりで、言葉を発する余裕がないようだった。
――はっきり言って、とても下手くそで胸を揉む手つきは寧ろ痛く。前戯でこれではどうしようもない


と、それは私がこうして呆れ果て、油断していた時に起こった。


「あ…っ!」

「……!」


服越しに乳首を甘噛みされ、思わず声が漏れる。
カコ君はその声にまた戸惑ったようだったけれど、ニヤリと彼が意味深な笑みを浮かべたのを
見届けると同時、ブラジャーごとワンピースを捲くり上げられてしまった。――上半身が外気に晒される


先程のいきなりの刺激も手伝ってかぴんと立ち上がって胸の先端にあるそれは
――私の、性帯感のひとつ。


「いや、やだ…カコ君。ちょっと待って…っ」

「は、…ははっ!」

敵将軍の首を獲ったと言わんばかり、声を上げて笑うカコ君を初めて不気味だと思った。
これが、極限まで追い詰められた人間だというなら確かにそうだ。


カコ君が私の右乳房を手でわしづかんでまさぐり、赤ん坊のように左の乳首を口に含むのを見れば
先生との情事を思い出して気分が高揚し、哀れむ余裕も無くなってきた。
そんな私にお構いなく、カコ君は執拗に尖端を舌でなぶり、――吸った。


「あぁっ…!」


全身がぞくりと震える。
もしかしたら軽く達してしまったかもしれない私の体は、淫乱。


「……ち、チズ…チズっ」

「あ……か、カコ君…!」


とうとう、パンツが下ろされた。ゴスロリ系の布に両サイドを紐で止める形状のそれは
所謂紐パンというやつで、カコ君がごくりと唾を呑むのがわかった。
カコ君は暫くその下着を見つめていたけれど、急に改まると私の目を真っ直ぐ見据えて言った。


「……な、なあチズ…俺…俺、こんなことしてんのさ…死ぬからとかじゃなくて……」

「………なに、よ」

「だ、誰でもいいわけじゃあないんだぜ?

――ち、チズじゃなきゃ…駄目なんだ。チズじゃなきゃ……」


チズの体に触れるたびに芽生える罪悪感と自己嫌悪は、アイツ
――教師の癖に生徒に手を出したあの野郎と今の俺の、この最低な惨状が重なったからなんだろう。
本心から出た言葉すら、自分を安心させるために打ち明けたにすぎないんだ。


「……カコ君」


強烈な自己嫌悪に苛まれてうなだれていると、何か温かいものが頬に触れた。
それがチズの手だってことに気付くのに時間はいらなかったけど、


「………っ」


こんな最低な俺に、チズがこんなにも優しくしてくれる理由は――俺が死ぬから
そうとしか考えられない卑屈な俺の思考を情けないと思った。
開けた服、荒い呼吸、余裕のない、初めての行為。
俺は好きな女の子とこんなことがしたかったのか?
俺は好きな女の子と、チズと、どうしたかった?


出来なかったこと、したかったこと。手を繋ぐこと、見つめ合うこと。告白、デート、
――女々しいってのは、多分こういうことをいうんだったか。
けど、そんなこと関係ない。俺達は、ことの順序を守る時間さえ与えられずに死んでいくんだ
――やっぱりどう覚悟したって死にたくない、死にたくない、生きたい。


「死にたく、ねぇよ…」

「………」


好きな女の子の肩口に、顔を埋めて泣いた。それも情けなくて、どうしようもなく泣けた。


「…なんで、こんな……こんなに、時間がないんだよ…っ俺達まだ十代なんだぜ?……なのに」

「カコ、君……っ」


見れば、チズも涙ぐんでくれていた。同調してくれてる?俺が哀れだから?
そう考えるより先に、手を伸ばして目許の涙を拭ってやる。
――好きな女の子の涙を拭うくらいはさせて貰ったって罰は当たらない、と思う
その手にチズが手を添えて優しく握り、ゆっくりと誘導されたその先は――露になったチズの下半身があった。


「……此処に、カコ君のが入るから……まずは少しずつ指入れて…慣らして」

「………っ」


思ったよりも柔らかいそこは、僅かな茂みによって守られながらじっとり湿っていた。
もう一人の俺が疼いて、息を呑む。そっと撫でると指先に何かとろりとしたが付着した。


「………すげぇ…濡れてる…、…」

「…………っん」


初めて触れたそこの感触に戸惑ったけど、何も知らないわけじゃない。
エロ本でみただけだけど、確か女は――


「……ここ、だっけ」

「は、あっ…!」


他の場所よりちょっと固い突起をひっかくと、甘い声と一緒にチズの体がびくっと跳ねて
なんだか俺までびくっとしてしまう。チズの下半身から滴る液体は、さっきよりも量を増して溢れ出た。


「カコくん・・……も、……い…れて……?」

「えっ?あ…うあっ、」


身を乗り出したチズが、股間を撫でる
――実はもう、限界だったりする。


「ね、……いれて」


耳に響くチズの艶めいた声に、頭の中が真っ白になった。


限界だった。思わぬ所で感情を吐露したカコ君は、思っていた以上に色々なことを考えていて
よこしまな下心も、一途な想いも、まっすぐな誠意も全て私に伝わった。


死にたくないという、普通に生きていたいという彼のささやかな望みが、叶わないことも改めて理解した。
死を楽観視して、追い立てて追い詰めて、情けをかけたつもりが彼を罪悪感の渦に陥れただけに過ぎないことも、理解した。


もしかしたら、私は今、少しだけカコ君のことが好きなのかもしれなかった。

こんな私を、犯してカコ君が浮かばれるなら――そう思ったら、とてつもなくカコ君が欲しくなった。
一撫ですると、カコ君が小さく呻き、次の瞬間ズボンに染みが現れる。


「………はあ、は、ぁ……っち、ず」

「……わぁ……か、こくん、イっちゃった……?」


最初はみるに耐えず馬鹿にしていた初々しさにさえ、慈しみを覚える。
殆ど寝そべっている状態だった体を起こして、ズボンのジッパーに手をかけ、
射精したばかりだというのに堅さを増すカコ君のそれを、直接手に取る。

人差し指で柔く先走りの溢れる先端を撫でるとどくんと脈打って、カコ君のそれは一回り大きくなった


「ち、チズ…チズ……う、ぁ……ま、また…出るから……っ」

「……だして、いいよ」


言いながら、それを咥内に含む。それと同時、カコ君は再び射精した。
後は、カコ君が私のナカをこの液体で満たすだけ。
――こんなことで、カコ君の、人の生死を軽視したことへの贖罪が出来るなら。


「……ち、チズ、俺……俺、もう…」


覚悟は決めた。全部終わったら、馬鹿にしていたこと、見直したこと、全部話してきちんとカコ君に謝ろう。
為されるが押し倒され、まま足を開らかされた――瞬間。

イルカのなく声が、聞こえた気がした


「……だ、ダメ!」

「……え」

こんなの、よくない。
何か、おかしい。


気がつけば、カコ君を押し返していて。
今更、現状の異常さに気がついた。


「ち、チズ?……俺とじゃいや、なのか?」

「こ、こんなの、……おかしいよ」

「なんで、今更……なんでだよ?」


全くもって今更。カコ君が唖然とするのも無理はないけど私、
――これじゃあまるきり、先生と

「同じ……なの、……こんなのじゃ、先生と、……変わらない」


こうなったのは、何のためだったか。
カコ君を少しでも死の恐怖から救おうと?
――きっとこの後の戦闘で、恐怖は戻ってきてしまう。こんなんじゃ、救うどころか逆に未練を残すだけ。
この、救われない。どうしようもない状況を作り出したのはほかでもない、私。
私自身のこの行動が、じわりと滲んでくる罪悪感の――正体。


「……同じ、って………俺と、……アイツがか?」


―――最悪だ


カコ君が、絶望したような表情でよろめく。
――私は、乱れた服を整えて立ち上がり、走り出した。

俺が、アイツと同じ?
あんなやつと、同じ?


チズは服を整えて走り出す。乗り気だったチズからの拒絶。――いきなり過ぎて、理解できない。


「ま、まてよチズ!俺は、俺はあんなやつとは違うんだぜ!?チズじゃなきゃ、…」


とにかく、このままではいられない。――俺はチズの後を追う。


「なあ、チズ……チズ…!俺はチズじゃなきゃ、チズじゃなきゃ嫌なんだぜ!?」


水族館の、長い通路を誰かが駆けている。
何かを追う少年と、それから逃げる少女。

『――滑稽だな』

階段へ続く道へと辿り着いた所で、少女は少年に追い付かれた。

『人を見下して哀れんで、あまつさえ中途半端な情けをかけて
……そんな自分を正当化した罪に、あんなところで気付くなんてよ。』

もがく少女のその顔は、罪悪感と劣等感で満たされていた。

『ククッ、あのカコってヤローも哀れなもんだ』

少女に掴み掛かる少年の顔からは、裏切られたときの絶望感と
その理由を言及しようとする必死さが見て取れた。

『あん?…うるせーな、俺様はあいつらの保護者じゃねーんだ。
ガキ15人の面倒なんか一々みてやれるかよ。』

少女は必死に少年を押し返し、蹴り上げた。
少年が、階段から転げ落ちる。

『にしても、一発くらいやらしてやらぁいいのに……あーはいはい、解ってるっての――ま、なんにせよ、もう手遅れだぜ?』

それを見届けた少女は、横たわる少年に畏怖と哀れみの目を向け
――再び何かから逃げるように、一目散に駆け出した


『―――さぁて、次のパイロットは誰だろーなぁ?』

レス :
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