誰にも言えない事がある。マキにも、もちろん両親にも。
部屋に鍵をかけ、窓を閉め、コモはおもむろにベッドに腰掛けた。右手には桜色の絹の生地。ふわりと広げてそれを両手で撫でる。手のひらから伝わる柔らかい感触に、うっとりと目を細めた。
「ん……今日は、これ」
クローゼットの奥には、誰にも知られていない引き出しがある。鍵つきのそこには、愛しい生地――絹から綿、麻にナイロンにベルベットまで。
開かずの扉ならぬ開かずの引き出しには、いつの間にやらコモの体臭をたっぷり吸い込んだ生地が詰まっている。
……こんなこと、誰にも言えないだろう。いい生地に興奮して、さらにそれで自慰するのがやめられない、など。
薄い水色の、上品なワンピースをゆっくりと捲り上げる。これもいい生地だ。肌に擦れる度興奮して、内腿をこすり合わせていたなんて言ったら、母は泣くかも知れない。街中で湿らせていた痴態を思い出し、コモは頬を赤くした。はしたない私。
白い、真っ白い太ももが露になる。桜色の生地で手で覆い、それで引っ掛けるように更に裾を捲り上げた。
「あ…………」
するするしたこの絹の感触は体のどの地点で快感に変換されるのだろう。内腿の触覚は総じて張り詰め、コモの脳髄を震えさせる。水色の裾、白磁の肌、桜色の絹。撫であげた先に、まだ薄い体毛が現れる。ほんの一つまみ、大事な部分を隠すには余りに頼りない。
下着ははいていなかった。骨盤にあたる生地の感触、もっと際どい部分に生地が触れるのを、歩きながら感じるのが気持ちいいのだ。
「私って……変態だわ……んぅ………き…もち、いい」
ベッドの端から転がった生地がふくらはぎを撫でた。それだけで声が漏れる。胸が熱くなる。下腹部がじゅんと潤う。
汗で首筋に髪が張り付いている。もどかしげに払い、背中のチャックに指を絡めた。降ろし、半裸になる。完全には脱がない。体に触れた服がちょっとずつずれる、こそばゆい感触がたまらないのだ。
「……っはぁ……」
皺になるのも気にしない。絹の上に横になり頬ずりする。柔らかい生地はそれに応えてコモに纏わりつき、受け入れるように皺を作った。
目を瞑る。身悶える。衣擦れの音と荒い呼吸――うっとりと生地を慈しむコモを見ているのは、ピアノだけ。絹を掬う指先がいやらしい、と自分でも思う。
「も、う」
もどかしい感触が高まり、高まり、我慢できなくなった。膨らみはじめた自分の胸に触れる。もちろん、絹を介して。体温の移ったそれで柔らかい乳首を何度もこすると、すぐに芯が出来る。生地越しに摘む。人差し指と親指で優しくつまんで、生地を滑らせて。
桜色のヴェールに覆われた双丘は身悶えるほどに震えて、コモの羞恥心と興奮は膨らむ一方だ。生地を使って自慰をしているのか、生地に抱かれているのか、段々分からなくなる。ここまで来ると陶酔は覚めない。突き当たるまで。
「あぁ……」
乳首をくるんでいた生地の両端をきゅっと引っ張る。
「やぁっ、ぅ、ん…」
突起の形そのままを表す絹。食い込んで、締め上げて。指先を少し動かすと生地が震える。どうしようもない快感が背筋を走り、コモはまた声を上げる。
「だめ、もう……」
いつの間にかべっとり汗をかいていた。もしかしたら、生地の色が変わっているかもしれない。張り付くワンピースをそれでも脱がず、水分を含んだ裏地をわざと体にこすり付ける。
盛大に喘ぎたいのを我慢して――我慢する必要などないのだが――絹を噛む。細長くした生地を、コモはついに股に挟んだ。
我慢していた。街で母といい生地のハンカチを見ていたときから、本当はずっと興奮していたのだ。今日はあの生地を食い込ませたい。抱きしめて頬ずりしたい、と。
素肌のままの尻に、絹をそらせる。手を挟み込んで、生地の端を掴んだ。
期待で胸がどきどきする。コモは目を瞑った。触れてもいなのにまた性器が湿る。ぐ、と手に力を込めた。桜色の絹を一気に、引いた。
「――あぁん! あ、い、いい、生地、じゃない……!」
柔らかい、温かい布が性器を順番に、目もくらむような快感を与えながら擦れ、食い込む。
コツさえ掴めばそれは生き物のように、気持ちいいところを刺激するのだ。ぷっくり隆起したクリトリスに繊維の一本一本がさわさわと纏わりつき、膨らんだ入り口の花びらをこそばしてゆく。
「ゃあ、あ、あ、ん、んん……!」
きゅうと音がするほど、膣の奥が窄まったのが分かった。律動を続ける隘路は絶え間なく蜜を吐き出し、入り口の形に食い込んだ桜色の生地を、濃い梅色に変えてゆく。
コモはさらに端を引っ張った。小刻みに布を上下させて、刺激を高める。充血したクリトリスが形を変える。捻られて、擦られて。
「んん……ん!」
花びらに誘われるように、すっかり濡れそぼった生地は膣に吸い寄せられていった。コモが喘ぐたび、布をすばやく引くたび、穴に生地が咥え込まれる。離したり、また咥えたりを繰り返しながら、たまらない波はどんどん高まってゆく。
口の端から透明の唾液が零れた。かろうじて奥歯で齧っていた生地の端にぽたりと落ちて、ゆっくり染み込んでゆく。その様が、なぜだろうか、すごくいやらしい。
「は、はっ、ん、ああぁん!」
なりふり構っていられなくなった。花びらへの曖昧な、けれども蓄積していく感覚と、クリトリスを苛める、どうしようもない快感。コモは布を手放した。けれどすぐに、股の近くでそれを掴む。
思い切り食い込ませた。そして、上下した。
「……やあああ――っああぁ、んんん――!」
一気に高まる快感。頭の中が桜色になる。
「――――」
何も、ない、今、この瞬間は。生地が与える快感と、自分自身以外に。
「……、……はぁ、はぁ、は、……っ」
一番大きな波の後にも、小刻みに膣が震えた。まるで、挟んだ生地を呼び込もうとするように。びくん、びくんと、律動は太ももまで震わせ、反った背中の中心には汗が一筋流れる。
浅い呼吸を繰り返した。未だ自らを犯し続ける生地に縋りつき、コモはじっと、自分の体と、皺だらけのワンピースを見ていた。
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